「親が元気なうちに、実家を自分(子ども)が買い取った方がいいのかな?」
「いや、普通に相続する方が税金は安いんじゃないか?」
親御様が大切にされてきた不動産。どう引き継ぐのがご家族にとって一番良い選択なのか、悩まれている方は非常に多くいらっしゃいます。
「生前売買」と「相続」、どちらにもメリット・デメリットがあり、「絶対にこちらがお得!」という簡単な答えはありません。
しかし、後悔しないための正しい判断手順と、そのために不可欠な『ものさし』は存在します。
【はじめに:とても大切なこと】
具体的な税金の計算や、「あなたの場合は〇〇円節税できます」といった税務相談は、法律で定められた税理士の独占業務です。この記事はあくまで判断の考え方を示すものであり、最終的なご判断は必ず税理士にご相談ください。
「生前売買」と「相続」それぞれの特徴を知ろう
まず、2つの方法の基本的な特徴と、関係する税金を見ていきましょう。
1.「生前売買」を考えるときのポイント
親御様が元気なうちに、お子様へ不動産を売却する方法です。
メリット
- 親の意思で、財産を渡したい相手(特定の子どもなど)に確実に引き継げる。
- 相続発生時の「誰がもらうか」という兄弟間のトラブル(争続)を避けやすい。
- 将来値上がりしそうな不動産なら、今の価格で取引できる。
注意点と税金
- 親(売主):売却して利益が出れば「譲渡所得税」がかかる。
- 子(買主):不動産を取得した際に「不動産取得税」「登録免許税」等がかかる。
- 子(買主):当然ですが、不動産を購入するための資金が必要です。
【最大の落とし穴:安すぎる売買はNG!】
「親子間だから、相場より安く売ってあげよう」
この考え、実は非常に危険です。
市場価格(時価)より著しく低い価格で売買すると、その差額分が「親から子への贈与」とみなされ、高額な贈与税が課される可能性があります。これを「みなし贈与」と言います。
▼不動産鑑定士の役割①:安全な取引の“お守り”この「みなし贈与」のリスクを避けるために、私たち不動産鑑定士が作成する『不動産鑑定評価書』が絶大な効果を発揮します。客観的な専門家が算定した「適正な時価」を証明する鑑定評価書があれば、税務署に対して「私たちは適正な価格で取引しました」と堂々と主張できます。安全な親子間売買のための、何よりの“お守り”になるのです。
2.「相続」を考えるときのポイント
親御様が亡くなられた後、財産を引き継ぐ、最も一般的な方法です。
メリット
- 購入資金がなくても不動産を引き継げます。
注意点と税金
- 子(相続人):不動産を含めた遺産総額に対して「相続税」がかかる(基礎控除額を超えた場合)。この「遺産の総額はいくらになるのか」「基礎控除額を超えていて、相続税がかかるのかどうか」といった複雑な計算と最終的な判断は、税金のプロである税理士の先生が行う専門業務です。
- 相続人が複数いる場合、誰が不動産をもらうかで揉める可能性がある。
- 相続税を支払うための現金(納税資金)を準備しておく必要がある。
【知っておきたいポイント:相続税の評価額】
相続税を計算する際、土地の評価は通常「路線価」という国が定めた価格を使います。
しかし、この路線価はあくまで“標準的な土地”を想定した価格。あなたの不動産が持つ個性(マイナス面)は考慮されていません。
例えば…
- 土地の形がいびつ(不整形地)
- 道路に接していない、または道がとても狭い
- 騒音、悪臭、高圧線など、周辺環境に問題がある、等。
税理士の先生に相続税の申告を依頼する際は、「うちの土地には、このような気になる点があります」と必ずご自身から伝え、相続税評価額にしっかり反映してもらうようにしましょう。
結論:後悔しないための「3ステップ」
では、結局どうすればいいのか。私たちは次の3ステップで進めることをお勧めします。
STEP 1:まずは「不動産の本当の価値」を知る
全ての判断の出発点は、「この不動産の客観的な時価は、今いくらなのか?」を正確に把握することです。
これが分からないと、生前売買のリスク予測が立てられません。まずは私たち不動産鑑定士にご相談ください。
STEP 2:客観的な「時価」を基に、専門家と最善策を練る
不動産の「適正な時価」が分かったら、次はその客観的な数字を持って、税金のプロである税理士の先生に相談に行きましょう。
なぜなら、ご家族にとっての最善策は、不動産のことだけを考えても見つからないからです。税理士の先生は、お客様全体の資産状況、ご家族構成、そして何より「ご家族の想い」を総合的にヒアリングした上で、最適なプランを提案してくれます。
このとき、私たちが作成した『不動産鑑定評価書』は、税理士の先生にとって、「生前売買した場合の税金シミュレーション」等の重要な判断材料となります。
STEP 3:税額だけでなく、家族の想いも踏まえて決める
税理士のシミュレーション結果と、ご家族の状況や想いを合わせて、最終的な方針を決めましょう。
「税金が安い」という理由だけで決めるのではなく、「誰に引き継いでほしいか」「家族みんなが納得できるか」という視点も大切にしてください。
まとめ
生前売買か、相続か。この問題に唯一の正解はありません。
しかし、不動産の客観的な価値を把握し、それを基に専門家と相談しながら冷静に比較検討することで、ご家族にとって最善の道を見つけることは必ずできます。
私たち不動産鑑定士は、その第一歩である「不動産の価値を正確に知る」という、最も重要な部分でお客様をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。