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相続改正、相続人以外の貢献を考慮する(特別寄与)

現行制度上、相続人以外のものは被相続人の介護を尽くしても、相続財産を取得することはできません。

そこで介護者の不公平感をなくすために新法が設立されました。

新法1050条では被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をして特別の寄与をしたこと、被相続人の親族であること、とあります。

長男の妻が夫の親の療養看護を無料でしたケースなどが想定されます。

その場合、寄与に応じた金銭の支払いを請求することができるとあります。

どうやって請求するのでしょう?

新法1050条2、3項では当事者間の協議が調わない、できない場合は家庭裁判所に処分の請求ができ、家庭裁判所は特別寄与料の額を定める、とされてます。

特別寄与者が被相続人の親族と限定されており要件がややこしいですが少しは相続紛争がおさまればと思います。

遺言書の保管等に関する法律

平成30年7月6日に法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立し、公布の日から2年以内に施行されます。

今までは公正証書遺言は公証人役場で保管されますが、自筆証書遺言は各自保管でした。

各自保管ですと紛失、改ざん等の恐れがあるため、ちゃんと法務局で保管できることになります。

これにより紛失、改ざん等の防止し遺言書の存在の把握が容易になり、検認も不要で相続手続きの円滑化になりそうです。

(申請についての概要)

法務省令で定める様式に従って作成した無封のものでなければならない(遺言書保管法第4条2)

遺言者の住所若しくは本籍地又は所有する不動産の管轄する遺言保管書で申請(同法第4条3)

遺言書保管官は申請人の本人確認のため書類及び説明を求める(同法第5条)

とありますので法務局は本人確認はするけど遺言書は無封のため中身の押印とかまでは確認しないということでしょうか。

保管してもらうにしてもしっかり遺言書は作る必要がありますね。(民法968条より日付、氏名、全文を自筆し、押印)

相続改正、遺言執行者の権限の明確化等

遺言執行者の権限の明確化等

(要点)
ア 遺言執行者の一般的な権限として,遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずることを明文化する。
イ  特定遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち,遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における遺言執行者の権限等を,明確化する。

(以上法務省webより)

今までは遺言執行者の規定内容がざっくりしてたので、明確化されるわけですね。

相続改正、自筆証書遺言の見直し

相続改正、自筆証書遺言の見直し(平成31年1月13日から施行)

遺言書には、

○公正証書遺言(公証人に作成してもらう)

○自筆証書遺言(遺言書と財産目録を全文自筆)

○秘密証書遺言があります。

このうち、自筆証書遺言の「財産目録」だけがパソコンで作成したり、不動産の登記事項証明書のコピーを添付していいようになります。ただし財産目録の各頁に署名押印することを要します。

遺言書は現行どおり全文自筆します。

全部パソコンじゃないので多少の緩和という感じですね。公正証書遺言の方をもっと利用しやすくしてくれれば、自筆での遺言書の不備、無効がなくなっていいと思うのですが。

相続改正、遺産分割前の処分

遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

現行制度では特別受益のある相続人が遺産分割前に処分したら不公平が生じるため、見直されます。

新法では遺産分割前に共同相続人の一人か複数がが財産を処分しても、共同相続人全員の合意により分割前の遺産とすることができます。

また処分した共同相続人の一人か複数の同意を得ることは要しません。

相続改正、仮払い制度等の創設・要件明確化

仮払い制度等の創設・要件明確化

現行は相続開始後、遺産分割がおわるまでは預貯金債権(イメージ:金融機関の口座)を勝手に払い戻しすることはできません。

祖父の相続のときも払い戻しができないため葬儀代、生活費等は叔父が一時立替えてくれました。

色々手続きをするべきことがあるし、急なことなので金銭の持ち合わせのある人がいなければ困ることも多いでしょう。

仮払い制度等の創設・要件明確化はそういう困りごと解消のために規定されます。

1,預貯金債権に限り家庭裁判所の仮払い要件が緩和されます。必要がある場合で、他の共同相続人に利益を害しない限り取得できることになりました。

2,家庭裁判所の判断を経ず、以下の計算式で求められる額は金融機関で単独で払い戻しを受けられることになります。

単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

例)預金600万で相続人子供2人→長男は100万円払い戻しができます。

相続改正、遺産分割の見直し

遺産分割の見直し

相続税改正で平成30年7月6日参議院可決されました。配偶者居住権と同様配偶者保護の観点です。

今までは民法903条1項により、被相続人から遺贈又は贈与を受けた者があるときは、相続財産の価額に贈与の価額を加えたものを相続財産とみなすことになります。

仮に現金5000万、贈与不動産3000万、妻と子供1人だと5000万+3000万が相続財産とみなされます。この8000万の1/2の4000万から贈与分3000万を引いて、妻の相続分は1000万となります。

これが903条4項が新設されると、婚姻期間が20年以上の夫婦が一方に対し居住用不動産について遺贈又は贈与したときは1項のように相続財産とみなさない意思を表示したものとされます。

例として5000万×1/2=2500万が妻の相続分とされ、改正前より多くの相続分となります。

配偶者居住権は所有権ではなく使用収益する権利なので、配偶者に所有権を持ってもらうにはこの903条4項の新設を利用し贈与を計画的に考えておくのがいいのでしょうか。

配偶者居住権

配偶者居住権とは

相続税改正で平成30年7月6日参議院可決され2年後の7月までに施行される予定です。

配偶者居住権は相続発生時、配偶者が被相続人の家に住む場合の居住権を確保するためのものです。(所有権ではありません。)

今は遺産分割で被相続人の配偶者が土地と家を相続した場合、子供に預貯金分が渡されることになりますが土地と家の価格が鑑定の結果遺産割合で高額になると(または預貯金がないと)子供に渡せる相続分を配偶者が用意する必要があり、配偶者の生活が困難になったり、せっかく相続した土地と家を売却せざるを得なくなったりすることもあります。

(例えば自宅が2000万として、配偶者、子供1人だけの場合、法定相続分は1000万ずつになるので配偶者は2000万の自宅を相続したら1000万分を子供に渡すことになります。)

配偶者居住権はこのような不具合解消のため自宅の所有権2000万ではなく、より低額の居住権を取得するという形になります。